頭上注意
ぶどうを作ろうと決めた時、
「有名な岡山や山梨のぶどうと比べられても勝てるぶどうを作る」
そう意気込んで品種も選んだ。
今となっては、品種も時期も栽培方法も異なる全国のぶどうたちの何に勝とうと思ったのか。
ぶどうにおいては全く産地ではないこの地域から全国に発信することを思うと、有名な他産地を意識しないわけにはいかなかった。
農業で生きていくことが難しい世界であることを刷り込まれてきたおかげで、農業で生き残ることは勝ち負けの世界だと思い込んでいた。
完全に周りの目を気にするタイプだというのが丸出しだ。
もっと肩の力を抜いて、私たちは私たちが伝えたいことを果物を通して表現したらいいと、そんなふうに思えるようになったのはごく最近なのだ。
話がそれてしまったが、そう意気込んで栽培を始めたのが超大粒になる2品種のぶどう。
黄金モッコ(雄宝)と薄紅モッコ(バイオレットキング)だ。
希少価値がありインパクトがあり、皮ごと種無し、そして味が良い。
やっぱり1番の決め手は味だった。
そして、ぶどう栽培初心者の私たちにとって、栽培しやすい品種というのも条件にあっていた。
ただ、希少価値があるというのはあまり栽培されていないということ。
勉強のために他県に行っても、同じ品種をここで栽培しても地域や土地、気候によって同じようにはいかないことを身にしみて感じてきた。
つまり、全て手探りで栽培しながらそのぶどうの特性を掴んで育てていかなければならない。
その一つがこの「釘吊るし」だ。
このぶどうは軸が短くて太い。
普通なら粒が大きくなるにつれて、軸が下に真っ直ぐにおりていくのだが、そうはいかない。
ほとんどの房は、軸が曲がったまま硬くなってしまう。
そこで、軸がまだ柔らかいうちに重りを吊るして軸を伸ばしているところ。
どうしても曲がりたい反抗期のぶどうたちを厳しく強制します。
こんなことも栽培するまでわからなかった特性。
ぶどうは奥が深いので本当に手探り。
まだまだ勉強。
でも奥が深いというのは、ますます探求したくなる果物です。