全ては産地を守るため
2月20日に八幡浜のある人を訪ねてきた。
ここ2年ほどず~とお会いしたいなと思っていた人。
それは、京丸農園の井上千代美さん。
なぜお会いしたかったか。
井上さんが暮らす地域の特産、「富士柿」という大きな柿を加工し、
干し柿や柿のスイーツといった新たな事業を展開されていたからだ。
私たちがどうしようかと踏みとどまっている柿の未来を、
真っ直ぐに切り開いているように感じていたので、その話を聞きたかった。
八幡浜は海に面してみかんのだんだん畑が壮大に広がり、愛媛でもみかんの産地として有名だ。
そんな地域のどこに柿畑があるのだろう。
そう思いながらナビの指示に従って海ではなく山に登り始めた。
そうするとすぐに視界が開け、山の斜面一面に柿畑が現れたのだ。
圧巻の景色だった。
私たちが栽培する地域はほとんどが平野で平たい畑。
それに対して山全体の急斜面を埋め尽くすように柿の樹が植わっていた。
この斜面でどうやって管理するのだろうか。
言葉も出ないくらいの傾斜だった。
井上さんは想像通り気さくで真っ直ぐな方だった。
そして、考えつくされた干し柿の味と話から、
物に向き合う熱意が自分とは比べ物にならないことをまじまじと感じた。
井上さんははっきり言っていた。
「干し柿や柿のスイーツの加工事業を伸ばしたいわけではない」
干し柿をきっかけにして富士柿のことをもっと知ってもらい、
衰退しゆく産地全体の富士柿が売れるようになれば地域も潤う。
井上さんの事業の全ては富士柿の産地を守るためにあるのだ。
産地の状況はどこも同じだ。
10年後、20年後、もっと先の地域の未来はどうなっているのか。
このままでは栽培する人がどんどん減って衰退していくだけなのに、
何か突拍子もないことを始める人がいれば手放しには応援されない。
地域のことを考えてやっているのに、地域の人々から理解されて受け入れられるまでには時間も労力もかかる。
それでもコツコツとやり続けることで、いずれ根が張り水脈ができ、パイプができる。
井上さんのそんな言葉がとても胸に刺さった。
ぶれない芯があるとはこういうことだ。
自分がいつもブレてばかりなので、ブレない人には惹かれずにはいられないのだ。
私たちの地域でも特に柿は深刻で、新規就農者で柿を事業計画に入れる人はまずいない。
丹原に多いのは「愛宕柿」という渋柿で、12月に販売される遅い柿。
愛宕柿は柿の中でも収穫量が多く見込まれ、
作れば作るほど売れた時代があったそうだ。
でも今はそういう時代ではない。
時代に合わない果物になってしまったのだ。
愛宕柿の栽培を引き継いだばかりの6年前は農協に生果として出荷していた。
それが、今はほとんど干し柿用の柿として枝をつけて出荷、販売している。
意外にも、都会の真ん中でベランダや庭で干し柿作りを楽しむ人は結構いる。
自分で作った干し柿の出来栄えを報告して下さる方も多い。
これを続けるか、樹を切って他の果物に変えるか。
ずっと悩み続けていたのだが、
今回井上さんにお会いして、このまま続けてみようと思った。
干し柿用の柿は、毎年楽しみにして下さっているお客様がいる。
何もかも新しいものに変えてしまうことは簡単で、
守り続けることの方が難しいように感じる。
ただ、守るものと新しく変えていくものはしっかり未来を見据えて見極めていかなければならない。
10年後、20年後、いやもっと先の地域の未来はどうなっているのかではなく、
自分たちがどうしていくのか。
それをしっかり見据えて行動できているか。
改めて自問自答するきっかけとなった。
地域のために何ができるか。
考えているのは、人を雇用して栽培農地を請け負って、会社として地域に貢献するのではなく、農家個々の取り組みを尊重しながら農家同士が連携できる方法を見つけたいと考えている。
ダメでも違ってもとにかくやるのだ!
来週は近所のバラ農家さんとこに行ってくる!
程よい甘さで食べたらとまらなくなるドライ富士柿も今なら京丸農園さんのネットショップで購入できます!
本当におススメです。
京丸農園公式HP→http://fujigaki.jp/